| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-457 (Poster presentation)
乾燥地におけるダストの発生には、植生、土壌等の地表面状態が影響するが、ダスト発生の頻度が増加する春季には、前年に生育した植物のリターによる地表面の被覆によりダスト発生が抑制されることが期待されている。ダストは乾燥湖などの低地域が主要な発生源とされているが、モンゴル・ゴビステップの低地周辺ではイネ科やキク科ヨモギ属等の一年草が繁茂し、ダストの発生を抑制する可能性が示唆されている。同地域は降雨パターンの時空間的変動性がきわめて高く、植生発達の変動も大きいが、これらの一年草の発生条件や生育分布は十分には明らかにされていない。そこで本研究では、そのなかでも高ストレス耐性種として知られるイネ科のChloris virgataを対象に、衛星画像解析と現地調査によりその分布特性や時間変動の特徴を明らかにし、ダスト発生との関連性を検討した。
調査はモンゴルドルノゴビ県サインシャンド市の中心地から東に100kmほどの乾燥湖周辺を対象地とした。対象地内の植生の状態の異なる4地点を選定し、植生調査と土壌調査を行った。また、衛星画像解析ではMODISの画像を用い、2015年から2020年までの夏季のNDVIと、2016年から2021年までの春季のSoil Tillage Index(STI)の値を算出して用いた。各地点における植生の特徴と土壌の特徴、C. virgata群落の発達と降水量の関係、C. virgata群落の発達とリターの関係、C. virgata群落の分布の特徴を分析した。
本研究の結果、C. virgata群落の発達には降水量だけでなく、降水のタイミングが重要であることが示唆された。また、C. virgata群落は乾燥湖の辺縁部分に多く生育している可能性が示された。C. virgata群落の発達する場所、リター供給の方法から、乾燥地におけるC. virgata群落の発達がダスト抑制に効果的であることが予想された。