| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-459  (Poster presentation)

土壌侵食が森林土壌の生態系機能に与える影響
The impact of soil erosion on forest soil ecosystem function

*小山田美森, 阿部隼人, 菱拓雄, 片山歩美(九州大学)
*Mimori OYAMADA, Hayato ABE, Takuo HISHI, Ayumi KATAYAMA(Kyushu Univ.)

日本の森林では、シカの個体数増加により下層植生が消失することで土壌侵食が起こりやすくなっている。森林における土壌侵食は空間的不均一性が高く、同一林分内での局所的な侵食は土壌特性の変化を介して土壌生態系機能に負の影響を与える可能性がある。そこで本研究では、スズタケが衰退した九州山地の3つのブナ林で、サイト内の土壌侵食の有無が土壌生態系機能に与える影響と侵食に影響を受けた機能どうしの関係を調べた。調査地点はブナ個体から斜面横方向に2 m離れた位置とし、各サイト16地点(計48地点)を設定した。各調査地点では0.5m²の範囲で露出している根の深さを測定し、その合計値を侵食の指標とした。各サイトの上位8地点を「侵食あり」地点、下位8地点を「侵食なし」地点とし、下記の項目の計測や算出を行った。リターバッグを設置し、リター残存率からリター分解機能を評価した。微生物活性とバイオマスの指標として、土壌呼吸の測定からそれぞれBR(基礎呼吸)とSIR(基質誘導呼吸)を求めた。有機物蓄積量として、リター量、腐植量、腐植有機物含有量、土壌有機物(SOM)含有量を調べた。土壌物理・化学特性として、容積重、体積含水率、pH、CN比、土壌炭素(C)濃度、土壌窒素(N)濃度を調べた。侵食あり地点において、BR、SIR、有機物蓄積量(全項目)、土壌C濃度は有意に低く、容積重は有意に高かった。これらはサイト間差も有意であり、SOM含有量を除き交互作用はなかった。土壌C濃度とBR・SIRの間には正の相関があり、容積重と土壌C濃度・BR・SIRの間には負の相関があった。したがって、局所的な土壌侵食は土壌の特性の変化を介して有機物蓄積や微生物活性を低下させること、また、サイト内での土壌侵食の効果は各サイトを通して同程度であることが示唆された。


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