| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-462  (Poster presentation)

Maxentを用いた東北6県のツキノワグマ人身事故要因分析及びリスク評価と将来予測
Analysis of factors causing personal injury of Asiatic black bears in 6 prefectures of Tohoku by using Maxent, risk assessment and future forecast.

*Yuki ENDO, 町村尚(大阪大学大学院)
*Yuki ENDO, Takashi MACHIMURA(Osaka Univ.)

 近年、野生動物と人間との軋轢が顕著化し、中でもツキノワグマによる人身事故は大きな社会問題となっている。そこでツキノワグマ人身事故を軽減するにあたり、人身事故発生地点の空間的特性を明らかにする必要がある。本研究ではツキノワグマ人身事故が在のみデータであることから、生物種分布モデルMaxentを用いることで統計学的にツキノワグマ人身事故リスクの空間分布を評価し事故要因を考察することを目的とした。また、要因の変化による人身事故リスクの将来予測を行った。
 対象地域は東北6県とし、教師データとして2006年∼2020年のツキノワグマ人身事故発生地点を用いた。ツキノワグマの大量出没はブナの豊凶と相関があることが判明しているため、全期間、ブナ豊作年、ブナ凶作年の3つのセットを作成し分析を行った。説明変数として、生息域、食物適性などのツキノワグマ要因と人口などの人間要因を含めた計11項目を使用した。その際、説明変数の多重共線性を評価しVIF>10となる説明変数を除去し、5回の交差検証を行い汎化性能を評価した。
 結果から、全てのケースにおいてツキノワグマの生息域が非常に大きな要因であることが判明した。全期間モデルとブナ豊作モデルではツキノワグマ要因の寄与が大きい一方、ブナ凶作モデルでは人間要因が増加する傾向が見られた。また、堅果類の豊凶パターンに類似性のある県をグルーピングしてリスク評価を行ったところ、福島・宮城グループでは推定精度が向上するとともに、生息域だけでなく標高や人口などの別の要因の寄与が増加し、ブナの豊凶によるリスク分布の差が明瞭となった。またこのモデルを用いて、生息域および人口の変化による人身事故リスクの変化予測もおこなった。


日本生態学会