| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-463 (Poster presentation)
キツツキ類は、樹洞営巣網におけるキーストーン種、また穿孔性森林害虫の有力な捕食者であり、その生態の解明は森林生態系の保全に重要である。しかし、複数種を対象に、生息状況に関わる音声データを通年連日調査した例は少ない。また、生物多様性に配慮した森林管理において、キツツキ類の利用枯死木を保残するためには、どのような枯死木を選好するのかを知る必要がある。しかし、営巣木に比べ、採餌木に関する知見は少ない。そこで本研究では、コゲラ、アオゲラ、アカゲラの分布する冷温帯林において、活動の日周性や季節性、採餌木の特徴を明らかにするために、以下の2つの調査を実施した。
ICレコーダーによる録音は、2021年4月~11月の間、日の出前30分と日の出後60分に毎日行い、鳴き声、ドラミング(求愛や縄張り主張)音、採餌音の発生時刻を記録した。鳴き声は、その鳥種を判別した。各音声について、①日の出から最初の発生までの時間、②月間の1日当たり平均集音時間等を算出した。また、枯死木毎に、採餌痕の有無と量、樹種、樹高、DBH、残留樹皮量、腐朽レベル等を記録し、GLM解析を行った。
その結果、①3種とも、日の出後30分以内を中心に鳴き始め、ドラミングと採餌も同じ時間帯に始まる、②コゲラは通年、アオゲラは8月~10月、アカゲラは9月~11月に多く鳴き、ドラミングは5月、一方採餌は9月に多い、ことが見出された。したがって、キツツキ類は、どの行動内容も早朝から開始すると考えられる。また、繁殖期の5月に多く集音されたドラミング音は主にアオゲラ、アカゲラのものであり、9月の採餌期は3種が盛んに活動していると推察される。共存時、体サイズが同程度のアオゲラとアカゲラの間では、競争関係があるかもしれない。GLMによって、採餌木として、DBHが大きく残留樹皮量が少ない枯死木、そのうち腐朽が進んだものや、ヒノキ、ミズナラ、サクラ属、シデ属を選好する可能性が示唆された。