| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-075  (Poster presentation)

糞虫類による種子の埋め込み能力の評価
Evaluation of seed burial ability by dung beetles

*辻大和(石巻専修大学)
*Yamato TSUJI(Ishinomaki Senshu University)

動物が糞を排泄すると、糞虫類が集まってきて糞を遠くに運んだり、地中に埋めたりすることが知られている。ゆえに、果実食者の糞に含まれる植物の種子は、糞虫類の採食によって、垂直・水平方向に移動していると考えられる。植物にとって、糞虫類の二次的処理は自らの適応度の増加(低下)をもたらす可能性があるが、この点に関する定量的な評価はこれまでほとんどなされてこなかった。そこで、本研究ではわが国の森林における代表的な果実食者であるニホンザル (Macaca fuscata) を対象に、糞虫類の活動が排泄後のサル糞に含まれる種子の埋土深に与える影響を評価することを試みた。調査は宮城県金華山島において2021年5月から11月にかけて毎月実施した。あらかじめ採集しておいた20gのサル糞に、サイズの異なる4種類の白いビーズ(直径2, 3, 5, 8mm)を埋め込み、柵内(3つの群落に計15基)に設置して糞虫類に自由に処理させた。一か月後に柵内を掘り返し、出現したビーズの埋土深を5cm間隔で7カテゴリに区分して評価した。糞虫は種子を最大で30 cm 程度の深さまで埋めることができたが、大部分の種子は0~5cmの範囲に埋められていた。埋土深に与えるビーズのサイズの影響について、有意差は認められなかった。4月はビーズが埋土される割合が低かったが、その後急激に上昇した(p < 0.05)。埋土割合の季節変化、金華山における糞虫類の活動性を反映したものと考えられた。本調査により、糞虫類は排泄された糞に含まれる種子の大部分を埋土することで齧歯類やシカからの種子の捕食回避に貢献している可能性が示された。糞虫類は、その活動を通じて散布後の種子の適応度を高めている可能性があるため、今後は野外での発芽実験を行って二次的処理の影響を評価したい。


日本生態学会