| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-076  (Poster presentation)

セイヨウミツバチは花を巡って他の訪花者と競争するか? 非線形時系列解析による検証
Do honeybees compete with other flower visitors on squash flowers? An EDM approach

*橋本洸哉(国立環境研究所), 池本美都(筑波大学), 横井智之(筑波大学)
*Koya HASHIMOTO(NIES), Mito IKEMOTO(Univ. of Tsukuba), Tomoyuki YOKOI(Univ. of Tsukuba)

同種の花を訪れる訪花者同士は、餌資源を巡って競争関係にあるとされる。その一方で、同種他個体を視覚で認識したり、同種や異種が花に残した匂いを認識したりすることによって、訪花が促進または抑制される例も少数報告されている。したがって訪花者間の相互作用は必ずしも競争だけとは限らないが、検証の困難さから過小評価されている可能性がある。近年発展しつつある非線形時系列解析手法であるEmpirical Dynamic Modeling(EDM)は、生物密度の時間動態の背後にある法則性を検出する手法であり、訪花者間の相互作用について新たな知見を提供できる可能性がある。そこで本研究では、カボチャ花上の訪花者を材料に、EDMを用いた訪花者間の相互作用の検出を試みた。デジタルカメラによるインターバル撮影を行い、カボチャ花を訪れる訪花者個体数の時系列データを得た。確認された訪花者の大半がセイヨウミツバチ(以下「セイヨウ」)で、その他はツチバチ類、マルハナバチ類、コハナバチ類等だった。セイヨウ以外の訪花者各種の個体数が少なかったことから、「その他」として個体数を合計した。まず、Convergence Cross Mappingによってセイヨウとその他との因果関係を検証した。その結果、その他からセイヨウへは、瞬間的および60分遅れの因果が検出され、セイヨウからその他へは、90分遅れの因果が検出された。次に、S-mapによって両者間の相互作用強度を定量した。瞬間的な相互作用では、その他からセイヨウへ負の影響が検出され、両者の間に競争的な相互作用が存在することが示唆された。一方、時間遅れの影響では、その他からセイヨウへの60分遅れの影響と、セイヨウからその他への90分遅れの影響はプラスであるという、予想外の結果が得られた。結果の蓋然性について精査の余地は残るものの、両者の間に競争とは異なる正の相互作用が存在することが示唆された。これらの結果は、EDMの導入により、見過ごされてきた相互作用の仮説を提示できることを示している。


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