| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-081  (Poster presentation)

カシノナガキクイムシの一次誘引物質は何か 【B】
What is the primary attractants for the ambrosia beetle Platypus quercivorus? 【B】

*山﨑理正(京都大学農学研究科), 辰巳賢史郎(京都大学農学研究科), PHAMDuy Long(VAFS), 伊東康人(兵庫農技総セ), 小林徹哉(神戸市立森林植物園)
*Michimasa YAMASAKI(Kyoto Univ.), Kenshiro TATSUMI(Kyoto Univ.), Duy Long PHAM(VAFS), Yasuto ITO(Hyogo Prefect.), Tetsuya KOBAYASHI(Kobe Municipal Arboretum)

カシノナガキクイムシの主要な寄主樹種であるコナラ・ミズナラは、国内では葉からイソプレンを放出する主要な種でもある。室内実験ではカシノナガキクイムシが寄主樹種の葉からの揮発性物質に誘引されることから、イソプレンがカシノナガキクイムシの一次誘引物質である可能性がある。これを室内実験で検証した。ジクロロメタンを溶媒として濃度を0.1%に調整したイソプレンを入れたガラスボトルと空のボトルを、Y字管に接続してポンプで吸引し、被害材から羽化脱出したカシノナガキクイムシを投入して選択させた。同様の試験を同濃度の集合フェロモンでも行い、物質側を選択した割合を比較した。また、国内の市街地や植物園には、イソプレンを放出する外来種の非寄主樹種が多く植栽されている。これらの種は、イソプレンを放出することで寄主樹種と誤認識されている可能性がある。これをナラ枯れ被害が進行中の神戸市立森林植物園で検証した。イソプレンを放出する非寄主樹種のモミジバフウとフウに、2021年6月中旬から9月中旬にかけて粘着トラップを設置し、約1週間毎に回収交換して、カシノナガキクイムシの着地数を調べた。
Y字管を用いた室内実験では、カシノナガキクイムシはその集合フェロモンを選択した割合と同程度の割合でイソプレンを選択した。また、野外試験では、モミジバフウにもフウにもカシノナガキクイムシの着地が確認された。寄主樹種の樹冠下に位置していて周辺の寄主樹種にカシノナガキクイムシの着地があると、非寄主樹種でもカシノナガキクイムシの着地というエラーが起こる確率が高くなる。しかし当該モミジバフウとフウには寄主樹種の樹冠はかかっておらず、周辺5m圏内に寄主樹種は分布していなかったことから、モミジバフウとフウへの着地は寄主樹種への着地に伴うエラーとは考えにくい。以上より、イソプレンがカシノナガキクイムシの一次誘引物質の一つであることが示唆された。


日本生態学会