| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-088  (Poster presentation)

送粉者シフトはいつ起こる? よりよりパートナーの条件 【B】
Conditions of new pollinator to be better partner when the pollinator shift is occur. 【B】

*勝原光希(岡山大学), 篠原直登(弘前大学), 松本哲也(岡山大学)
*Koki KATSUHARA(Okayama Univ.), Naoto SHINOHARA(Hirosaki Univ.), Tetsuya MATSUMOTO(Okayama Univ.)

 被子植物の多様化において送粉者との関係が重要な役割を果たしてきたという仮説は、古くはダーウィンにまでさかのぼる伝統的なアイデアである。特に“送粉者シフト”が種分化や多様化を駆動するというアイデアは、多くの実証研究や系統学的研究から支持されている。これらの研究の多くは、花のサイズや形と送粉者の口吻長とのマッチングや、誘引に用いられる花香成分に対する送粉者の種特異的な反応など、植物と送粉者の形質の対応関係に着目して行われてきた。
 送粉系は、蜜などの報酬を伴う「相利共生送粉系」と、報酬を伴わず、送粉者の交尾相手や産卵基質、報酬を持つ花などに擬態して送粉者を誘引する「だまし送粉系」に大別できる。後者のなかでも、性フェロモンに類似した花香成分で送粉者を誘引する分類群では急速な種の多様化が知られているが、これは、わずかな花香成分の変化が容易に送粉者シフトを引き起こすことから説明されると考えられてきた。
 一方で、誘引形質に着目せず、植物と送粉者の個体群動態に着目した場合にも、「だまし送粉系」で頻繁な送粉者シフトが生じることが予測される。なぜなら、「相利共生送粉系」では報酬を介して現在のパートナーの送粉者個体群が拡大する一方で、「だまし送粉系」では、だまされるコストを介して、現在のパートナーの送粉者個体群は縮小することが期待されるためである。この場合、「だまし送粉系」の方で新たなパートナーを利用することへのインセンティブが強く働き、「相利共生送粉系」よりも送粉者シフトを伴う種分化を強く促進するかもしれない。
 そこで本研究では、個体ベースモデルを用いて植物と送粉者の進化‐群集動態のシミュレーションを行い、「相利共生送粉系」と「だまし送粉系」の送粉者シフトの起こりやすさの違いや、それぞれの送粉系における送粉者シフトの起こりやすい条件について検証を行った。


日本生態学会