| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-090  (Poster presentation)

高速フラッシュ蛍光光度法を用いたミジンコ付着藻類Colacium sp.の光生理測定
Measuring photophysiology of Colacium sp. attaching on water flea by fast repetition rate fluorometry

*風間健宏(神戸大学), 早川和秀(琵環研セ), 霜鳥孝一(国立環境研究所), 今井章雄(国立環境研究所)
*Takehiro KAZAMA(Kobe Univ.), Kazuhide HAYAKAWA(LBERI), Koichi SHIMOTORI(NIES), Akio IMAI(NIES)

高速フラッシュ蛍光光度法(FRRf)は、真核藻類およびラン藻類における光化学系II(PSII)のパラメーター群(光吸収断面積、最大量子収率、実効量子収率、および非光化学消光)をリアルタイムに測定することができる。これまでのFRRf研究のほとんどは浮遊性藻類を対象としており、付着性藻類に適用した例は非常に少ない。本研究では、FRRfのバリエーションの一つであるキュベット型FRR蛍光光度計を用い、動物付着性藻類Colacium sp.のPSII光生理について、動物プランクトンに付着した状態(着生期)のまま測定する方法について検討した。まず、①基質動物プランクトン(Scapholeberis mucronata、和名アオムキミジンコ)の個体密度がFRRfの蛍光測定値に与える影響について評価した。次に、②2020年4~7月にかけて毎月1回、琵琶湖のヨシ帯で採集を行い、得られた着生期のColacium sp.のPSII光生理を測定した。同時に、脱皮殻から単離したColacium sp.をAF-6培地で培養し、得られた浮遊期のColacium sp.のPSII光生理を、着生期の測定値と比較した。最後に、③Colacium sp.の付着メカニズムを解明するため、「Colacium sp.は不足するCaやMnをミジンコの殻から得ることで、光合成活性を高く保つことができる」との仮説を立て、着生期と浮遊期の光生理に対するCaおよびMnの添加効果を確かめる実験を行った。
①の結果、S. mucronataが5個体/mL以下なら、測定結果に対する影響を無視できることが分かった。次いで②の結果、異なる時期に採集したにも関わらず、着生期の光合成活性のばらつきは非常に小さかった。また活性の平均値は、着生期と浮遊期どちらの場合も同じように高いことが示された。最後に③の結果、付着期に対して添加効果は見られなかったが、浮遊期に対しては、Mnを加えることで光合成活性が高くなり、強光ストレスも低減される可能性が示された。一連の結果から、FRRfは付着性藻類の生態解明において非常に有効なツールであることが示された。


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