| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-091  (Poster presentation)

植物の匂いによる血縁認識レベルーセイタカアワダチソウにおいてー
Kin-recognition level through VOC in tall goldenrod

*塩尻かおり(龍谷大学農学部), 渡中新太郎(龍谷大学農学部), 上杉あかね(RIMT大学)
*Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ. Agr.), Shintaro WATANAKA(Ryukoku Univ. Agr.), Akane UESUGI(RMIT University)

植物は何らかの被害をうけると、テルペン類などの揮発性有機物質(VOCs)を放出する。このVOCsを受容した植物は、病害虫に対する防御力を高める。この現象は植物間コミュニケーションとよばれ、これまでに40種以上の植物で報告されている。さらに、セイタカアワダチソウやセージブラシでは、VOCsで血縁認識しており、血縁度の高い個体からのVOCsを受容するとより被害が低くなることが明らかになっている。しかし、その認識レベルの程度は明らかになっていない。そこで、本研究では、人工授粉をさせ血縁関係がわかっているセイタカアワダチソウを用いて、匂いによる血縁認識のレベルを明らかにすることを目的とした。
ハサミで葉を半分に切り取った個体(匂い源)の周りに、匂い個体と同じ遺伝子型の個体(self)、匂い個体と花粉親と種子親が同じ(full-sib:血縁度1/2)、匂い個体と花粉親のみ同じ(half-sib:血縁度1/4)、匂い個体と同じ個体群(population)匂い個体と異なる個体群(region)の5個体を配置し、匂いを2週間受容させた。コントロール個体は、葉を切らない個体の周囲に2週間配置したものである。その後、京都大学生態学研究センターの研究圃場にランダムに配置し、定植1か月後に病害虫による葉の被害を計測した。
その結果、self個体とfull-sib個体では被害が少なくなったが、half-sib、population、region個体ではコントロールと有意な差はみられなかった。つまり、匂い認識レベルは血縁度1/2と1/4の間にあることが示唆される。本研究で用いたhalf-sibは花粉親が同じ遺伝子型である。今後、匂いの識別に遺伝子型による違いが重要であるのか、母性効果遺伝が重要なのかを明らかにしていきたい。


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