| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-093 (Poster presentation)
都市開発は、生息地の喪失や分断化を招くことから生物多様性減少の一因であるとされている。生物多様性の減少に伴い、生物機能群の組成や生物間相互作用の変化が予測される。送粉系において、植物と訪花昆虫の機能分類群間の訪花関係の変化は植物の繁殖成功に影響する重要な要因である。しかし、都市化によって送粉系の機能群間の訪花関係がどう変化するのかについては十分な検証がなされていない。そこで本研究では都市開発が進む千葉県北部の草原において、周辺宅地率の増加が植物機能群・送粉者機能群及びその相互作用関係にどう影響するのか評価を試みた。
野外調査は2019年6-11月と2020年3-11月に計60日間行った。調査は22か所の周辺環境の異なる草原を対象に各草原で15分間、花に訪花する昆虫の種類・その個体数と植物種を記録した。各調査において、単位面積あたりの開花種とその花数の概数を記録した。野外で同定できない送粉昆虫はすべて捕獲し、顕微鏡下で同定を行った。送粉者と植物は口吻及び花筒の長さを計測し、長い方から順にL、M、S、SSの機能分類群に分けた。草原周辺の土地被覆は第7回植生調査(環境省)の植生図に基づき、宅地、草地、樹林、湿地、畑地に分けたのち、調査地の中心から半径500m内の宅地率を求めた。宅地率の増加に伴い、送粉者の種数、個体数、口吻長組成、植物の種数、花筒長組成、送粉者と植物の対応関係がどう変化するか解析を行った。
結果は、宅地率の増加に伴い、送粉者に関しては口吻長Lの種数とLとMの個体数、植物に関しては花筒長Lの種数が減少した。その結果、口吻長・花筒長いずれの組成も宅地率の増加と共に短くなることが分かった。送粉者機能群と植物機能群の対応関係にも宅地率の増加と共に変化が見られ、特に花筒長Lの花への訪花者の組成が大きく変化していた。この結果は宅地率の増加が特定の機能群やその送粉相互作用関係に影響することを示している。