| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-096  (Poster presentation)

宿主植物を共有する2種のハナホソガの遺伝構造比較
Comparison of genetic structure between two Epicephala species sharing host plants

*古川沙央里(京大・生態研, 龍大・農), 川北篤(東大・理・植物園)
*Saori FURUKAWA(Kyoto Univ., Ryukoku Univ.), Atsushi KAWAKITA(Univ. of Tokyo)

コミカンソウ科植物とハナホソガ属ガ類は植物と種子食性の送粉者が互いに強く依存し合う送粉共生系のひとつである。ハナホソガの雌成虫は、宿主植物の雌花に能動的に授粉した後、その子房内部に産卵する。孵化したハナホソガ幼虫は果実内に複数ある種子のうち数個のみ摂食して成熟するので、ハナホソガ幼虫の食害を免れた種子により、植物も子孫を残すことができる。

コミカンソウ科植物には和歌山から沖縄本島にかけて広く分布するカンコノキと、八重山諸島以南に分布する姉妹種ヒラミカンコノキがある。この2種の植物は区別されることなく、ハナホソガ2種(Epicephala obovatellaEpicephala corruptrix)に送粉されている。E. obovatellaの幼虫は上述したように種子食者だが、もう一方のE. corruptrixはハナホソガの中では稀な虫こぶ形成者である。ハナホソガ2種についての生活史と宿主植物への貢献度から、E. obovatellaと比べて、E. corruptrixはより寄生的な種であることが明らかになっている。

本研究では、これら2種のハナホソガにの分布が混在している地域に着目して、ハナホソガの地理的分布と遺伝的構造を調べることで、E. corruptrixが宿主植物にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。


日本生態学会