| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-234  (Poster presentation)

佐渡島の山地と平野におけるモリアオガエルの形態・生態的比較
Morphological and ecological comparisons of Rhacophorus arboreus between mountain and plain on Sado Island.

*藤田健(新潟大学), 澤田聖人(筑波大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Takeshi FUJITA(Niigata Univ.), Kiyoto SAWADA(Tsukuba Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

島嶼生態系は、辿り着くことのできた生物で構成されているため、空いているニッチを利用することによりニッチを拡大している種が多く存在する。ニッチ拡大に伴い種分化に至ったとされる研究も多くあることから、新たな環境への適応とその適応形質を検討することは、進化学的に重要な情報となり得る。本研究の対象種であるモリアオガエル(Rhacophorus arboreus)は一般に森林性のカエル類として知られており、主な繁殖地は山間部の止水域であるとされている。しかしながら、佐渡島では平野部(国仲平野)の水田地帯においても広域的にモリアオガエルの分布が確認されている。日本本土において本種とニッチの重複が大きいカエル類としてはシュレーゲルアオガエル(Rhacophorus schlegelii)が知られているが、佐渡島にはそのシュレーゲルアオガエルが生息していない。これらのことから我々は、佐渡島においてモリアオガエルは競合種のいない平野部の水田地帯へとニッチを拡大させているという仮説をたてた。さらに、平野部(国仲平野)の水田地帯は両端にある山地(大佐渡山地、小佐渡山地)から人家等で隔離されているため、本種の個体群間には地理的隔離が生じている可能性が高い。
 そこで本研究では、調査地域を国仲平野、大佐渡山地、小佐渡山地、只見町(福島県)、景観を水田と林内の止水域に分類し、地域・景観間で、本種の成体の形態、卵塊の体積・クラッチサイズ、幼生の水温選好性の3つの形質の差異を検証した。その結果、国仲平野、及び水田において、成体の体サイズ、卵塊の体積・クラッチサイズが小さい傾向にあり、また高水温を選好することが明らかとなった。加えて、水田個体はみずかきの発達度が林内の止水域と比較して低い傾向にあった。このことから、モリアオガエルは山地-平野間で形質が分化している可能性が高く、水田個体はシュレーゲルアオガエルと似た形質を獲得する収斂が起こりつつあることが示唆された。


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