| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-239  (Poster presentation)

ザゼンソウの発熱形質は寒冷適応に寄与するか 【B】
Potential contribution of thermogenesis in Symplocarpus reniforius to avoid reducing distribution and genetic diversity in ice age. 【B】

*佐藤光彦(かずさDNA研究所), 松尾歩(東北大), 大塚孝一(長野県植物研究会), 高野(竹中)宏平(長野県環境保全研究所), 牧雅之(東北大), 岡野邦宏(秋田県立大学), 陶山佳久(東北大), 稲葉靖子(宮崎大)
*Mitsuhiko P SATO(Kazusa DNA Res. Inst.), Ayumi MATSUO(Tohoku Univ.), Koichi OTSUKA(Botanical society Nagano), Kohei Takenaka TAKANO(Nagano Emv. Cons. Res. Inst.), Masayuki MAKI(Tohoku Univ.), Kunihiro OKANO(Akita Prefectural Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Yasuko INABA-ITO(Univ. Miyazaki)

発熱植物は現在90種ほどが知られており、花が発熱することで匂いを拡散し、送粉者を誘引している可能性が考えられている。その多くが温暖な地域に分布するが、サトイモ科のザゼンソウ属は唯一寒冷地での発熱が報告されており、発熱形質が寒冷適応に寄与している可能性が考えられる。日本国内には発熱するザゼンソウ(Symplocarpus renifolius)とナベクラザゼンソウ(S. nabekuraensis)、近縁で発熱しないヒメザゼンソウ(S. nipponicus)の3種が生育しており、発熱形質の適応進化プロセスを理解する上での良いモデルケースである。ザゼンソウ属の発熱形質が送粉生態や寒冷適応に与える影響を明らかにするため、生態ニッチモデリングを用いてザゼンソウの生育適地と分布制限要因を推定し、非発熱近縁種のヒメザゼンソウと比較した。また、葉緑体およびMIG-seqによる核のDNA配列からザゼンソウ属の遺伝的多様性と集団構造を比較した。MaxEntを用いた生態ニッチモデリングによって現在の分布が再現でき、両種とも冬季の降水量が分布を制限する主要因であること、ザゼンソウでは冬季の降水量が多いほど生育確率が高くなるが、ヒメザゼンソウでは中程度以降生育確率は変わらないことが推定された。最終氷期にはヒメザゼンソウよりもザゼンソウの方がより広い地理的範囲にパッチ状に分布していたことが推定された。ザゼンソウ葉緑体DNAでは北方型・日本海型・太平洋型・局所型の地理的に傾向のある4つのグループに分けることができた。そのうちの一つはナベクラザゼンソウと一致していた。核DNAでは種間は大きく離れており、葉緑体とは異なる分化パターンを示した。集団間の遺伝的分化度は地理的な距離に概ね比例していた。種子散布と花粉散布によって異なる多様化のパターンが推察された。本発表では積雪への応答や花粉散布について発熱形質との関係を考察する。


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