| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-241  (Poster presentation)

マイクロコズムを用いた多段階捕食ー被食系における共進化動態の実験的解析
Experimental analysis of coevolutionary dynamics in a multitrophic prey-predator system by using microcosms

*山本京祐, 玉木秀幸(産総研・生物プロセス)
*Kyosuke YAMAMOTO, Hideyuki TAMAKI(AIST)

【背景・目的】捕食-被食関係や宿主-寄生者関係にある生物種の間には、被食者(宿主)の防衛進化とそれに対する捕食者(寄生者)の対抗進化がしばしば見られ、進化的軍拡競争等の特徴的な進化動態が生じる。こうした進化動態については様々な理論的・実証的研究がなされてきたが、その多くは二者(ギルド)間の相互作用とその進化的帰結を解析対象としている。一方で、自然環境中においては捕食者がさらに上位の捕食者からの捕食圧にさらされているケースも一般的であることを考えると、捕食者-被食者間の生態・進化動態が上位捕食者の存在によって受ける影響についての知見も、共進化動態の理解には重要である。そこで本研究では、細菌およびウイルスからなるモデル微小生態系を利用し、被食者-捕食者系と被食者-捕食者-上位捕食者系との比較によって、捕食-被食関係の連鎖が構成種の進化動態に及ぼす影響を実験的に解析した。
【方法・結果】二者(被食者:大腸菌、捕食者:捕食性細菌)および三者(前二者+上位捕食者:捕食性細菌感染性バクテリオファージ)からなる混合培養系を構築し、連続培養を実施した(希釈培地、30℃)。35日間の培養後、捕食者および被食者を単離し(進化株)、捕食能および被食特性を祖先株と比較評価した。二者系においては捕食者の捕食能向上や被食者の防衛進化が示唆された一方で、三者系では捕食者の捕食能低下が観察され被食者の防衛進化はみられなかった。このことから、上位捕食者の存在が捕食者から被食者への選択圧を低減させ、被食者および捕食者の進化動態を変化させることが示唆された。集団ゲノム解析によって実験終了時の集団における捕食者および被食者ゲノムの変異パターンを解析したところ、二者、三者それぞれの系に特徴的な変異が被食者、捕食者ともに見いだされ、表現型変化をもたらす変異の候補を複数特定した。


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