| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-243 (Poster presentation)
繁殖干渉はある種の繁殖・配偶行動が近縁他種の適応度を低下させる種間相互作用である。これまでの理論研究では、種間の干渉の負の効果の大きさと両種の初期個体数に依存して定常状態 (共存または片方の種の排除)が決定されることが示されていた。しかし、干渉の負の効果は単一のパラメータで表記されるため、雌雄の繁殖行動 (e.g., オスの種間求愛の頻度、メスの配偶者選択)自体が系にどのような影響を与えるかは調べられていない。本研究では、近縁2種間の繁殖干渉を想定し、ある時間内にオスの探索及び求愛行動とメスの配偶者選択が複数回繰り返され、同種のオスと交尾出来たメスの割合によって、次の時間の個体数が決定されると仮定した個体群動態モデルを構築した。また、両種の雌雄ともに自種-他種を完全には識別できず、自身のもつ連続的な戦略値に基づいて、自種の一部との配偶を避ける (以下、保守戦略)か、他種の一部との配偶を受け入れる (以下、寛容戦略)かを決定すると仮定した。このモデルを用いて、雌雄の配偶についての戦略が系の動態に与える影響を調べた。その結果、相手種のオスが寛容戦略である場合 (即ち、種間求愛が強い)、メスは保守と寛容の中間的な戦略 (以下、中間戦略)であるときに同種オスとの交尾率が最大になった。また、少なくとも片方の種のオスは保守戦略 (即ち、種間求愛が弱い)であり且つ、両種のメスが中間戦略であるときに、2種は共存可能であることが示された。また、強い種間求愛を受ける種 (見かけ上繁殖干渉をされる種)でも、メスが中間戦略であれば種は存続可能であり、強い種間求愛をする種 (見かけ上繁殖干渉をする種)が存続できないことも示された。これらの結果から、雌雄の戦略が2種間の繁殖干渉の結果に大きく影響しうることが示唆された。