| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-244  (Poster presentation)

グループサイズの協力行動の進化に与える影響 ~進化ゲーム理論を用いた数理解析~
The effect of the group size on the evolution of cooperation ~mathematical analysis by evolutionary game theory~

*黒川瞬(北陸先端大)
*Shun KUROKAWA(JAIST)

協力を自分の適応度を下げて相手の適応度を上げる行動であると定義する。協力は自然界に多く観察されるが、協力は自分の適応度を下げる行動であるため、その存在は説明を要する。「相手が協力をしたら協力をし、相手が協力をしなかったら協力をしない」という行動を個体がとる場合、協力者は、非協力者よりも、協力をされやすくなる。そして、その結果、協力は進化しうる。このようなメカニズムを互恵性と呼ぶ。「協力者とは関係を続けるが非協力者とは関係を打ち切る」という行動を個体がとる場合、協力者は、非協力者よりも、協力者と出会いやすくなる。そして、その結果、協力は進化しうる。このように選択的に関係継続するかどうかを決めるメカニズムをopt outと呼ぶ。いま、ヒトは大きいグループにおいても協力をする。Boyd & Richerson (1988)は、大きいグループにおける協力の、互恵性を介した進化が、理論的に起こりえるのかについて進化ゲーム理論を用いて調べた。結果は、生み出される全体のベネフィットがグループサイズに依存しない財である場合(common goodsの場合)に加え、1個体が得られるベネフィットがグループサイズに依存しない財である場合(public goodsの場合)においても、大きいグループにおける協力は互恵性では説明できないというものであった。それでは、大きいグループにおける協力の、opt outを介した進化は、理論的に起こりえるのだろうか?私はこの問いに対して進化ゲーム理論を用いて取り組んだ。そして、その結果、common goodsの場合は、大きいグループにおける協力はopt outでは説明できない一方で、public goodsの場合は、大きいグループにおける協力はopt outで説明できることを明らかにした。


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