| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-268  (Poster presentation)

石川県中北部におけるモグラ二種の分布状況
Distribution of two moles, the lesser Japanese mole and the larger Japanese mole, in the central and northern part of Ishikawa Prefecture

*吉村和倫, 横畑泰志(富山大学)
*Kazumichi YOSHIMURA, Yasushi YOKOHATA(Toyama Univ.)

モグラ類は種間で空間利用様式や食性の差異が小さく、均質な土壌条件の元での2種の共存は難しい。石川県金沢平野には競合により分布域が縮小しているアズマモグラMogera imaizumii(以下、アズマ)と拡大しているコウベモグラM. wogura(以下、コウベ)が分布するが、コウベの分布北限に当たる平野北部の津幡町付近では両種が競合により隣接して生息しているとされ、平野中央部の手取川扇状地では扇状地の不均質な土壌環境の元で両種が混在している(Moribe and Yokohata、2011)。2021年7~11月に、津幡町付近でコウベの分布北限の現状と両種の分布に対する土壌環境の影響を詳細に調査した。
調査は現地でトンネルを探し、Moribe and Yokohata(2011)と同様にトンネル径が4.5cm×4.5cm以上であればコウベ、それ未満だとアズマと識別した。10分以上探してトンネルがなければ、モグラの生息なしと判断した。貫入式土壌硬度計(DIK-5520, 大起理化工業株式会社製)を用い、5 cmごとに地下50cmまでの土壌硬度を計測した。JMP Pro14による正準判別分析を用い、30cm以深に貫入式土壌高度計を刺せなかった地点を除く87地点の土壌硬度の類似性を比較した。
結果は分布境界域の大半を含む最多の45地点にモグラの分布が見られず、両種が隣接する場所は1ヶ所のみであった。これはコンクリート化などによりモグラの生息に適した畦が著しく減少しているためである。トンネルが見られたアズマ18地点、コウベ24地点のうち16地点(38.10%)で誤判別が生じた。この地域では土壌環境は手取川扇状地より均質で、両種は類似した環境に生息しており、混在は難しいと考えられる。しかし両種ともに畦の改変の影響を極めて強く受けており、アズマではコウベとの競合の影響よりも大きいであろう。


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