| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-274  (Poster presentation)

越冬個体群の個体群管理モデル 【B】
A population management model for overwintering populations 【B】

*松田裕之(横浜国立大学)
*Hiroyuki MATSUDA(Yokohama National University)

 季節移動して越冬地で農林水産業等への被害をもたらす有害鳥獣に対して個体数管理を行う場合、越冬地に来遊する個体数ではなく、繁殖地も含めた個体群の存続と被害対策の両立を図ることになる。しかも、複数の繁殖地AとBから複数の越冬地CとDに来遊する場合、CとDでの駆除数が、AとB両方の個体群の存続が必要になることがある。その際に許容される駆除数は、AとBを別の個体群とみなす場合と、単一個体群とみなす場合で変わるだろう。
 いま、AとBの個体数をx1x2、AからCとDへの来遊率をm11m12(来遊数x11x12x1=m11 x1x2=m12 x1)、Bからの来遊率をm21m22とする。CとDでの駆除数をy1y2とし、AとBからの来遊数の比に応じて捕獲されるとする。つまり、Cで捕獲される個体群Aの捕獲数y11y1 x11/(x11+x21)となる。個体群AとBの駆除数の上限をh1 x1h2 x2とするとき、CとDでの捕獲数y1y2がこれらの上限を満たす条件は、連立不等式から導かれる。仮にm12=0つまりAからDへの来遊がないとき、上限を満たす駆除数を得る解は、Cでの駆除数は常に正だが、Dでの駆除数はh1 m21> h2 m11のとき0となる。すなわち、BからCへの来遊率が高い場合、Dでの駆除ができなくなる。その場合は、越冬地C及び個体群Aの駆除数を上限より低くするか、AとB由来の個体を選別して駆除するなどの技術が必要になるだろう。


日本生態学会