| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-276  (Poster presentation)

灌漑用水路を生息場所とする流水性イシガイ類マツカサガイの環境DNAを用いた保全 【B】
Conservation research on the freshwater unionid, Pronodularia japanensis, living solely in irrigation canals using new eDNA marker 【B】

*畑啓生, 山下尚希, 渡辺椋太(愛媛大学)
*Hiroki HATA, Naoki YAMASHITA, Ryota WATANABE(Ehime Univ.)

環境DNA(eDNA)は、水サンプルから水生生物の存在を検出するのに有効で、特に生息密度の低い希少種や、底質に埋在するなど隠蔽性の高い種に対して有効である。西南日本の愛媛県では、過去30年の間に2種の淡水性イシガイ類が急速に減少し、絶滅の危機に瀕している。本研究では、マツカサガイのCOI領域を標的とした種特異的なeDNAマーカーを設計し、2020年、2021年に、これを用いた調査と、従来のモニタリング調査を実施した。その結果、道後平野のマツカサガイの分布域は2013-2014年と2020年との間で変化しなかったが、密度は99%減少していた。さらに、マツカサガイが採取されていないが、生息が予想される5つの地点でもeDNAが検出された。一方、隣接する道前平野では、2020年末に圃場整備予定地の農業水路からマツカサガイ個体群が発見された。周辺水路と河川において、eDNAマーカーを用いて調査したところ、わずか400 m程度の土水路区間のみが主要な生息場所となっていることが明らかになった。この研究により、マツカサガイの種特異的なeDNAマーカーが確立され、この希少で隠蔽性の高い種の分布調査やモニタリングに有効であることが検証された。


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