| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-277 (Poster presentation)
地球温暖化に伴う海水温の上昇により,熱帯・亜熱帯海域に生息する南方種が温帯海域に分布拡大する現象が近年増加している.特に,砂浜海岸に生息する十脚甲殻類のスナガニ属では日本列島の太平洋・日本海沿岸に関わらず,南方種の分布拡大が報告されている.東北地方では,従来温帯種のスナガニのみが生息していた.しかし、沿岸砂浜域の減少に伴うスナガニの個体数の減少が懸念され,宮城県では絶滅危惧II類と指定されている.一方、2018年秋に宮城県沿岸の複数箇所の砂浜において,スナガニ属の南方種であるツノメガニとナンヨウスナガニの未成熟個体が初めて確認された.演者らも2019年より2021年まで秋に両種を確認しているが,いずれも未成熟の小型個体であり,越冬はせず死滅していると考えられる.今後,宮城県以北の太平洋沿岸でも南方種のスナガニ属が分布拡大する可能性もあり,正確な分布情報の把握は,温暖化に対する指標となる期待される.しかし,この3種のスナガニ属は砂浜で同所的に採集され,特に宮城県で南方種が確認される8~10月では,いずれの種も未成熟小型個体のため形態形質での種同定が難しい.そこで,本研究では遺伝解析として比較的容易なPCR-RFLP法を用いた種同定方法の確立を目指した.スナガニ属3種は2019~2021年にかけて仙台湾周辺および静岡県御前崎周辺の砂浜海岸で採集した.このうち,形態形質により区別できた29個体をmtDNAのCOI および12S rRNA, 16S rRNAをPCRにより増幅し,複数の制限酵素で処理した.本講演では得られた結果をもとにPCR-RFLP法によるスナガニ属の種同定の有効性について議論する.