| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-280  (Poster presentation)

ドローンを用いた屈斜路湖におけるヒメマス繁殖のモニタリング
Monitoring the reproduction of kokanee salmon in Lake Kussyaro with a drone

*吉川朋子, 岩谷音羽, 後藤瑞穂, 横倉啓, 友常満利(玉川大学)
*Tomoko YOSHIKAWA, Otoha IWATANI, Mizuho GOTO, Kei YOOKOKURA, Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ.)

 産卵に集まったヒメマスの空撮から,画像解析で得られる情報を把握し,繁殖生態の調査方法を検討することを目的とした.調査は北海道東部の屈斜路湖で,沿岸2地点(南岸A,北岸B)で,2020年の10月11-21日と2021年の10 月 16-30 日に行った.空撮に加えて水中カメラによる行動観察も行った.
 2020年の空撮画像では産卵床,ヒメマスの雌雄,及びウグイの大型個体を計数し,魚類の体長もおおまかに把握することができた.2021年は鮮明な画像が得られず,場所により雌雄の区別やウグイの計数ができなかった.
 産卵床数はA地点B地点の順で2020年は86と40,2021年は40と9と両年ともA地点の方が多かったが,個体数は2020年は216と265,2021年は74と92と2地点で大きな違いがなく,産卵床数の違いは産卵の開始がA地点の方が早いためだと考えられた.年を比較すると10月の同時期の調査だったが,2020年の方が産卵床数も個体数も多かった.2021年は産卵の開始が遅かったと考えられるが,年毎に繁殖個体数が変動している可能性も考えられた.A地点での雌雄比は,2020年は雄:雌=1:1.3,2021年は1:1.2 であった.
 2つの調査地の底質は,一方は砂地で,一方はカワゴケ類に覆われた礫と砂地が混在する場所であった.産卵は礫を露出させた産卵床で行われ,雌は礫を覆う砂が3 cm 以内の地点に産卵床を作っていた.水中撮影の動画を比較すると,2020年はA地点では産卵床からの追い払い行動が多くみられたがB地点では雌が砂起こしにより産卵床を作っている段階であった.2021年はA地点で雌の砂起こしが見られたが,B地点では砂起こしも雄同士の追い払いも見られず,産卵期の初期の段階と考えられた.
 空撮は広範囲の状況を把握することができ有用であるが,ヒメマスに関しては,期間を通した観察による個体数の増減などの把握がまず必要である.水中の撮影には雲の反射や風のない状態が望ましく,風向きや天候を選ぶ必要があった.


日本生態学会