| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-285  (Poster presentation)

爬虫類・両生類の脱出が難しい排水路の落下防止対策とモニタリング
Fall prevention measures and monitoring of drainage channels where reptiles and amphibians are difficult to escape

*藤田宏之(埼玉県立川の博物館), 稲垣喜弘(坂戸市), 富田恵理子(鳩山野鳥の会), 小西修也(坂戸市), 渡邊孝平(坂戸市), 真野博(城西大学 薬学部)
*Hiroyuki FUJITA(Saitama Museum of Rrivers), Yoshihiro INAGAKI(Sakado City), Eriko TOMITA(Wild Bird Society of Hatoyama), Nobuya KONISHI(Sakado City), Kohei WATANABE(Sakado City), Hiroshi MANO(Josai University)

2018年10月坂戸市森戸地区内の三面コンクリートの水路において,爬虫類,両生類などが溜め升から脱出できなくなっていたのを多数確認した事例を本学会第66回大会で報告した.その後の坂戸市民有志と坂戸市役所による落下防止ネットの敷設とその後のモニタリングを68回大会で報告した.落下防止ネットの敷設によって落下する動物は減少したが, 2021年8月に落下防止対策の強化をおこないその効果を検証した.対策前のモニタリングでは2018年10月13日~11月5日は6種52個体の爬虫・両生類が確認されたのに対し,対策後の2019年9月27日~11月23日は5種20個体,2020年9月28日~11月19日は7種24個体と減少したが下げ止まり傾向がみられた.上流部の用水路からの進入だけでなく,スリット状のグレーチング蓋から溜め升への落下や意図的な進入も考えられた.2021年8月市民有志と市役所の協議の結果,落下防止強化対策として蓋へのネット敷設を実施した.また溜め升脱出スロープにヘビ類が隙間入り込んでしまうのを防ぐため,スロープの角材にウレタンを巻いた.落下防止強化対策後の8月29日~11月15日のモニタリング結果は6種23個体の確認であった.確認個体数はほぼ横ばいだったが,調査回数を2020年の10回より49回に大幅に増やしたためと考えられ,調査1回あたりの確認個体数が2.4から0.47と減少した.特にヒバカリは2020年の12個体から,2021年は2個体へと減少した.ヒバカリはカエル類を好むが,水中に潜って幼生を捕食するなど積極的に水辺に近づくため,排水路への落下だけでなくグレーチング蓋から溜め升への意図的な進入も考えられ,蓋へのネット敷設の効果によって溜め升への進入を防いだ可能性がある.今後もモニタリングを継続し,溜め升内での確認個体数のさらなる減少を目指したい.


日本生態学会