| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-291 (Poster presentation)
乾燥化等による湿性草地の植生変化が指摘されている国指定鳥獣保護区特別保護地区の仏沼干拓地内(約222ha,青森県三沢市)において、UAV画像から得られる植生指数を活用した植生モニタリング手法の検討を行うため、植生調査による地上調査と、マルチスペクトルカメラ搭載のUAV(P4 Multispectral,DJI社製)による空撮を行った。植生調査は、調査対象地を北西から南東方向に仏沼を横切るように設定した7本のラインに沿って、およそ30m間隔で計168地点の調査区(1m四方)を設置し、調査区内の植生を上層と下層の2階層に区分したうえで、階層ごとの高さと植被率(%)、各階層の優占上位3種の高さと被度(%)を測定した。また、UAV空撮により得られたマルチスペクトルの情報を持つ画像から4つの植生指数(NDRE,NDVI,GNDVI,OSAVI)を算出した。植生調査は2021年7月25~29日に、UAV空撮は7月20~21日に実施した。
植生調査の結果、上層はヨシが優占するものの、下層の優占種によって5つの植生タイプに区分され、それらはヨシの量(高さ×被度)と水分条件と関係していた。ヨシの量が最も多いアオミズ優占タイプは、比較的乾いた場所に見られ、NDRE等の植生指数の値は高かった。ヤマアワ優占タイプ、アゼスゲ優占タイプ、ヒメシダ優占タイプの順にヨシの量は概ね減少し、植生指数の値も低下した。カサスゲ優占タイプは、最も過湿の場所に成立していたが、ヨシの量はアオミズ優占タイプに次いで高く、植生指数も高かった。植生調査地点の植生タイプと植生指数との関係を教師データとする分類樹木を用いた植生予測の結果、アオミズ優占タイプの正答率は94%と高かったが、過湿の状態に成立していたカサスゲ優占タイプについては28%と低く、アオミズ優占タイプに分類される場合が多かった。これは、カサスゲ優占タイプが近年の湛水でアオミズ優占タイプから急激に変化した途中段階の植生であることが原因と考えられた。