| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-296  (Poster presentation)

未圃場整備・圃場整備水田・耕作放棄地で鳥類種数の大小関係になぜ地域性があるのか?
Nationwide-bird survey disentangles why northern abandoned farmland has higher species richness than traditional and consolidated farmland

*北沢宗大(北大院・農), 山浦悠一(森林総合研究所), 河村和洋(森林総合研究所), 先崎理之(北大院・地球環境), 中村太士(北大院・農)
*Munehiro KITAZAWA(Agric., Hokkaido Univ.), Yuichi YAMAURA(FFPRI), Kazuhiro KAWAMURA(FFPRI), Masayuki SENZAKI(Env Earth Sci., Hokkaido Univ.), Futoshi NAKAMURA(Agric., Hokkaido Univ.)

  農業の集約化と耕作地の放棄は、農地景観の生物多様性を変化させる主要因である。しかし、両者が生物多様性に与える影響は国や大陸間で異なることが報告されている。農地景観で効果的に生物多様性を保全するためには、これらの地域差を説明して、理解・予測する必要がある。

  私たちは、群集を優占する機能群(湿原性・草原性・森林性・裸地性・水辺性種)が地域により異なることによって、未圃場整備・圃場整備水田(集約化農地)・耕作放棄地間における群集全体の種数・個体数の大小関係に違いが生じると考えた。例えば、高茎草本を選好する湿原・草原性の種が多い地域では、耕作放棄地は農地よりも群集全体の種数・個体数が多くなるだろう。本研究では、この仮説を検証するために日本各地で鳥類調査を繁殖期と越冬期に実施し、6つの主要な土地利用(未圃場整備水田・圃場整備水田・耕作放棄地・湿原・畑・森林)における鳥類の種数・個体数を機能群・群集レベルで比較した。
  
  調査・解析の結果、仮説は調査時期によらず支持され、6つの土地利用間における群集全体での種数・個体数の大小関係は地域によって異なった。群集に森林・湿原・草原性鳥類が優占する場合(繁殖期の北日本・越冬期の南日本)、群集の種数・個体数は未圃場整備水田より耕作放棄地で多かった。また、未圃場整備水田の種数・個体数は圃場整備水田と同程度かより多かった。群集に裸地・水辺性鳥類が優占する場合(繁殖期の南日本)、未圃場整備水田における、群集の種数・個体数は耕作放棄地と同程度かより多く、また圃場整備水田より多かった。これは北日本で森林・湿原・草原性種が、西日本では裸地・水辺性種が群集全体の種数・個体数を左右したためである。機能群を単位として群集を解析することで、土地利用の転換や保全活動が生物多様性におよぼす影響や効果を正確に予測でき、地域における効果的な保全策を立案できるようになるだろう。


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