| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-297 (Poster presentation)
陸域生態系の基盤をなす植物の多くは、ハナバチを中心とした送粉者に大きく依存している。しかし、近年、ハナバチの減少が世界的な関心事項となっており、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が2016年に発表した送粉者に関するアセスメントレポートによれば、ハナバチを絶滅させる重大な脅威として「農薬」および「病原生物」が指摘されている。農薬は、直接の毒性だけでなく、ハナバチの免疫低下をもたらし、疾病発症リスクを増大させることも示唆されている。こうした農薬による複合的な影響評価については、これまで室内レベルの試験報告はあるものの、野外レベルでの検証事例はほとんどない。
国立環境研究所らの共同研究チームでは、農薬による生態影響の統合的評価を目的とし、2021年度より、在来のニホンミツバチApis cerana japonicaを用いた大規模調査を推進している。8-10月に採取したコロニー関連のサンプル(はちみつ、巣板、ワーカー)について残留農薬および病原体の検査を行うとともに、蜂群の健康状態および翌年の存続状況に与える影響を評価する。さらに、「農薬ばく露」と「蜂群の健康・存続状況」は、蜂群の周辺環境との関連が予想されるため、サンプル採集地点から半径2000mの土地利用状況を整理し、土地利用パターンに基づいた予測モデルの構築を検討している。本発表では、現在進行中の上記調査に関して、現在までに明らかになっていることを紹介する。
なお、本調査は、全国のニホンミツバチ養蜂家の皆様(約400名)に参加登録をいただき、サンプル採集は187群で実施された。蜂群の存続調査(2022年3月)では、最大約2000群のデータ収集を予定している。