| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-304  (Poster presentation)

河川に生息する淡水魚類の時間的変化は生息地によって異なる
Temporal changes in freshwater fishes vary among riverine habitats

*森照貴(土木研究所自然共生C), 中村圭吾(土木研究所自然共生C), 萱場祐一(土木研究所自然共生C, 名古屋工業大学)
*Terutaka MORI(ARRC, PWRI), Keigo NAKAMURA(ARRC, PWRI), Yuichi KAYABA(ARRC, PWRI, Nagoya Inst. Tech.)

生物多様性の回復や保全に対する社会的要請が高まる一方、河川における生物多様性の急速な減少が世界中で報告されている。日本においても、淡水魚などを中心に生物多様性に対する脅威が多く述べられているが、この主張を支える科学的知見が不足しているのが現状である。そこで、本研究では全国にある109の一級河川を対象に、1990年から継続されている「河川水辺の国勢調査」のデータを用い、淡水魚類の種数および個体数の時間的変化を明らかにした。各河川での調査は5年に一度行われるが、調査年は河川によって異なっていた。そのため、河川をランダム効果として、一般化加法混合モデルによる解析を行い、単調な増加・減少だけでなく様々な時間変化を表現できるようにした。その結果、25年間でタナゴ類やトゲウオ類などは個体数が減少しており、個体数密度がゼロに近づきつつある種の存在も示された。各種で得られた傾向を踏まえると、流水を主要な生息場所とするよりも、ワンドやたまり、湧水、水路といった場所に生息する種の方が減少傾向にあった。一方で、多くの魚種が増加傾向にあることも示された。本研究では1990年からの変化を捉えているが、1990年以前に起きた水質汚濁や河川改修などの影響を考慮できていない。そのため、1990年の時点ですでに脅威を受けていた可能性が高いことを踏まえれば、今後、さらに河川環境の改善を図る必要があると考えられた。


日本生態学会