| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-305  (Poster presentation)

流水性希少サンショウウオを対象にした効率的な環境DNA検出手法の検討
Investigation of an effective method to detect environmental DNA targeting lotic salamander species

*坂田雅之(神戸大・院・発達), 竹下大輝(神戸大・院・発達), 西澤崚平(神戸大・院・発達), 佐藤拓哉(京大・生態研センター), 源利文(神戸大・院・発達)
*Masayuki K. SAKATA(Kobe University), Daiki TAKESHITA(Kobe University), Ryohei NISHIZAWA(Kobe University), Takuya SATO(Kyoto University), Toshifumi MINAMOTO(Kobe University)

希少種の生息地を把握することは保全のための基盤となる。希少種など低密度で生息している種の調査は従来の採捕調査などでは困難であり、環境DNA分析はこのような種の調査を得意とする手法である。特定種を対象とした環境DNAの検出には大きく分けてエンドポイントPCRとPCR後の電気泳動でのバンド確認でDNAを検出する手法(以下conventional PCR法)と、蛍光色素を用いたリアルタイムPCRでDNAを検出する手法(以下real-time PCR法)がある。本研究ではこれらの手法を用いて希少種であるオオダイガハラサンショウウオ(Hinobius boulengeri)を対象に環境DNA分析を行い検出率やコストの面から効率的な検出手法の検討を行った。京都大学フィールド科学教育研究センター和歌山研究林内の小河川32地点で採水を行い、2つの手法で環境DNAを分析した。32地点中、両手法で環境DNAが検出されたのは6地点、real-time PCR法のみで検出されたのは2地点、conventional PCR法のみで検出されたのは0地点、どちらの手法でも環境DNAが検出されなかったのは24地点であり、手法間で検出結果に統計的に有意な差はみられなかった。real-time PCR法は設備や分析にかかる金銭的なコストがconventional PCR法よりも大きい。一方で、conventional PCR法の場合、金銭的なコストが低いことが大きな利点であるが、解析に手間がかかり、PCR産物を電気泳動することによってDNAの増幅を確認するため、コンタミネーションのリスクが比較的高くなってしまう。各分析手法の特徴を考慮し、コストに合わせて環境DNA分析法を選択することで希少種の広域・多地点調査を行うことがより容易になると期待される。


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