| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-309  (Poster presentation)

愛媛県におけるマルタニシの分布動向とスクミリンゴガイの影響
Distribution trends of pond snail, Bellamya chinensis in Ehime prefecture and the influence of apple snails

*村上裕(愛媛生物多様性センタ)
*Hiroshi MURAKAMI(Ehime Biodiversity Center)

マルタニシCipangopaludina chinensis laetaは、水田の身近な巻貝「タニシ」として認知され、愛媛県内の一部の地域では食用にも利用されていた。乾田化に伴う越冬場所の消失や様々な要因によって生息地が消失し、環境省RLでは準絶滅危惧種に区分されているが、県内の近年の生息状況は明らかになっていない。スクミリンゴガイPomacea canaliculataは、水稲稚苗を食害する南米原産の外来生物で、愛媛県では1986年7月に松山市と宇和島市の一部において野生化した本種が確認された。現在県下20市町中12市町で確認されており、平野部水稲地域を中心に広範囲に分布している。本種は県条例にて侵略的外来生物に指定されており、放逐が禁止されている。
本研究ではマルタニシの分布動向を明らかにするために文献記録(1999年)と現地調査(2020年以降)の分布データを比較した。分布調査時にマルタニシとスクミリンゴガイが同所的に生息する場所が確認されたことから、スクミリンゴガイ防除がマルタニシに影響を与える可能性を明らかにするために、スクミリンゴガイ防除薬剤として流通しているメタアルデヒド粒剤(10%)による誘引および殺貝試験を行った。水深5cmの水田に3kg/10aのメタアルデヒド粒剤の施用を想定し、0.06g/Lの薬量で室内試験を実施した結果、スクミリンゴガイは製剤に直ちに誘引され、1時間後には苦悶する個体が出現し、24時間後には60~100%の殺貝効果を示したのに対して、マルタニシは本製剤に誘引行動を示さず、72時間後においても0~25%の殺貝効果であった。メタアルデヒドは軟体動物に対する毒性があるが、水中での成分流出を緩やかにした製剤であることと、誘引餌成分として配合ざれるフスマと穀粉がマルタニシを誘引する効果が低い可能性が明らかになった。


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