| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-316  (Poster presentation)

ディープラーニングを用いたオオサンショウウオの個体識別
Individual identification of Japanese giant salamanders using deep learning

*高屋浩介(京都大学), 田口勇輝(広島市安佐動物公園), 伊勢武史(京都大学)
*Kosuke TAKAYA(Kyoto Univ.), Yuki TAGUCHI(Asa Zoo, Hiroshima), Takeshi ISE(Kyoto Univ.)

生態学において個体レベルの研究は様々な分野に影響する。例えば、個体群の齢構成や生活史、適応度を把握するためには個体レベルのデータを長期間取得する必要がある。データ取得のためには個体の識別が不可欠であり、これまでは個体に直接標識を付ける侵襲的な手法が用いられてきた。しかし、対象種の行動や生存率に影響を与えるだけでなく、標識が脱落する可能性もあった。非侵襲的な個体識別手法としては目視で個体識別する方法も古くから実施されてきたが、識別技術を習得する必要があることや識別に労力がかかることが課題だった。近年、deep learningによる画像認識技術の進歩により、画像から対象種を識別する研究が増加している。しかし、先行研究の多くは種の判別に取り組んだものが多く、個体識別の研究は少ない。そこで、本研究では、オオサンショウウオ(Andrias japonicus)を対象種とし、画像からdeep learningを用いて個体識別が可能かどうか明らかにすることを目的とした。オオサンショウウオ頭部の斑紋は個体ごとに異なるため、この斑紋を識別する人工知能モデルを作成した。広島市安佐動物公園における飼育下のオオサンショウウオを垂直に撮影し、頭部の斑紋をMask R-CNNを用いて学習させた。教師画像には、オオサンショウウオを水上及び水中で撮影した画像を用いた。テスト画像には、教師画像と同日に撮影した画像を用いた。解析の結果、水中の画像を用いた場合は高い精度でオオサンショウウオの個体識別が可能であることが明らかになった。水面の反射を抑え、オオサンショウウオの斑紋を高解像度で撮影できたことが要因として考えられる。一方、水上の画像を用いた場合の精度は低かった。オオサンショウウオの体表が光で反射し、同じ個体にもかかわらず画像により見え方が大きく異なったことが精度低下の要因と考えられる。今後は、撮影日の異なる画像でも識別可能か検討することが課題である。


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