| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-323 (Poster presentation)
南アルプスには、ダケカンバ林や亜高山帯針葉樹林下に、「お花畑」といわれる高茎草本群落が成立していた。しかし、1990年頃からニホンジカが亜高山帯や高山帯に進出したことで、最初はそれが嗜好する植物が減少し、近年は不嗜好植物までも採食対象となってきている。
そこで、ニホンジカの影響を受けているお花畑の一部を植生保護柵で囲み、植生の回復に努めている。一方で植生保護柵に囲まれていない元お花畑は、夏季から秋季にかけてニホンジカの食事の場所として利用されている。
かつて高茎草本群落が成立していた熊ノ平、北荒川岳、本谷山における1979年(近田・増沢)から現在に至る植生変化について報告する。
熊ノ平は、1979年はオオンバショリマやシシウドが優先する高茎草本群落であったが、シカの採食影響からマルバダケブキが優占する群落に変化したが、近年はマルバダケブキが点在する植生に変化していた。
北荒川岳では、かつてはホテイアツモリが点在する高茎草本群落であったが、マルバダケブキの優占に変化し、現在はマルバダケブキはほぼ消失し、地上3㎝程度まで刈り込まれた草原に草丈10cm程度のタカネコウリンカが点在する状態に変化していた。
本谷山は、シシウドやマルバダケブキが優先する高茎草本群落であったが、現在はバイケイソウが点在する群落に変化していた。
3箇所ともかつて不嗜好植物といわれたマルバダケブキやバイケイソウまでも採食の対象となっており、かつてのお花畑の面影はどこにもない。