| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-326 (Poster presentation)
本研究では、日本の水田で普遍的に見られるニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)と準絶滅危惧種トノサマガエル(Rana nigromaculata)の2種を対象に、農法や畔草管理法、排水路構造の違いがカエル類の生息数や食性に及ぼす影響を明らかにした。トノサマガエルは圃場整備を受けて生息数が減少傾向にある一方、ニホンアマガエルは農法や圃場整備の影響がいまだ不明瞭である。2020~2021年の6~8月に、石川県羽咋市から宝達志水町にかけての邑知平野の水田地帯で広域調査と水田群調査を行った。広域調査では、自然栽培田(無農薬・無肥料栽培)と慣行栽培田を選定し、農法と畔草管理法と水路構造の違いがカエル類の生息数や食性に及ぼす影響を明らかにした。水田群調査では、土製水路が併設された地区とコンクリート製水路が併設された地区の水田群を選定し、水路構造の違いがカエル類の生息数に及ぼす影響を明らかにした。一般化線形混合モデル(GLMM)解析の結果、広域調査から、ニホンアマガエル生息数は排水路の高さと流速に対し正の応答を示した。一方、トノサマガエル生息数は排水路の高さと流速に対し負の応答を示し、草丈および畔の無脊椎動物多様度に対し正の応答を示した。また、トノサマガエルは、7月下旬に農法の異なる水田間で胃内容物組成が異なり、慣行栽培田より自然栽培田で肥満度が高く、生息数も多かった。水田群調査では、ニホンアマガエル生息数は排水路の流速に対し正の応答を示した。また、土製水路の水田群と比べてコンクリート製水路の水田群で生息数が多かった。トノサマガエル生息数を説明する環境要因は見出せなかった。以上より、トノサマガエル生息数の向上には自然栽培の取組みや、畦草の高刈り、低い水路の設置が効果的と考えられる。一方、ニホンアマガエルは、農法や畔草管理法の影響を受けておらず、コンクリート製水路の併設された水田で生息数が多かったため、圃場整備後の水田で繁栄していく可能性が示された。