| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S02-2 (Presentation in Symposium)
国土レベルで急速に進みつつある長期的な人口減少や高齢化、社会保障費の増大による財政悪化、他方での気候変動による気象災害の頻発化・激甚化を背景に、EcoDRRを始め、自然がもたらす多様な生態系サービスを活用した解決策への関心が高まっている。日本では、「日本の里山・里海評価」以降、国土がもたらす多様な生態系サービスの定量評価や、シナリオ分析を用いた将来予測に関する研究水準が大きく向上した。他方で、生態系サービスの観点からのEcoDRRの評価は、対象とする空間スケールが流域から広域自治体レベルにとどまっている。地球研Eco-DRRプロジェクトのグループ2では、PANCES(S-15)プロジェクトやJBO3の知見や蓄積を踏まえつつ、全国レベルで生態系サービスと洪水リスクとの間にどのような関係があるか、それら関係が将来どのように変わりうるかのシナリオ分析することを目的としている。評価対象とした生態系サービスは、供給サービスとして食料供給ポテンシャル、調整サービスとして森林炭素固定量、蒸発散、NO2・SO2吸収量、地下水涵養量、土壌流出防止量、窒素・リン除去量、表層崩壊からの安全率、文化的サービスとして、登山・キャンプポテンシャルである。本発表では、2010年データの解析結果にもとづく生態系サービスのバンドル分析の結果と共に、水害リスク安全度から見た生態系サービスの供給の解析結果を紹介する。バンドル分析では、自然環境保全基礎調査の植生調査データをもとに作成した100mメッシュの土地利用被覆データを共通の入力情報として推計した生態系サービスの値を1kmメッシュレベルで集計し、階層クラスター分析により全国の市町村の生態系サービスの傾向を検討した。水害リスクについては、機械学習による氾濫解析をもとに、建物、農業生産、人口それぞれについて甚大な浸水被害を受けない安全度を求めると共に、各安全度を相加平均した総合安全度を指標として用いた。