| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S02-3 (Presentation in Symposium)
滋賀県には湖岸沿いから山間部にかけて古くからの集落があり、それぞれの地域の自然環境や自然の恵みを活かした農林水産業、石材業といった地場産業などが営まれてきた。また、北国海道や琵琶湖などを通じ、北陸や京都などから人や物が行き来してきた。時には大雨が降って土石流や洪水が起こったり、強風が吹くなどの自然災害が起こるため、人々は災害対応のための様々な工夫を行ってきた。例えば、河川に霞堤や人工的な水路を設置したり、河畔林や琵琶湖湖岸に位置する内湖を含むの湿地が保全されてきた。また、集落周辺の山々や河川から産出される花崗岩やチャートなどの石材は、こうした自然災害を防ぐための堤や水路、波除石のほか、シシ垣、棚田の石積みなどに利用された。屋敷周りには「ヤカギ」と呼ばれる防風林が植栽された。
本報告では、滋賀県の湖西地域における伝統知・地域知に注目し、過去から現在、そして未来につながる自然の恵みと災いに向き合う地域の知恵と技術について、主に江戸時代から大正期までの絵図の分析に基づき抽出し、分類することを目的とした。そして、防災・減災に関する伝統知・地域知を活かすための地域の取り組みの事例を複数取り上げ、それぞれの特徴や課題を整理した。以上の結果に基づき、歴史から学ぶことができる自然災害への対処方法を今日に活かす方策について、生態および文化的な観点を重視しながら検討した。