| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S02-5  (Presentation in Symposium)

福井県三方五湖における伝統的Eco-DRRの活用
Traditional knowledge of Eco-DRR in Mikatagoko Lakes, Fukui, Japan

*吉田丈人(総合地球環境学研究所, 東京大学)
*Takehito YOSHIDA(RIHN, University of Tokyo)

河川の氾濫による浸水や土砂災害などの自然災害が近年頻発している。気候変動の影響が拡大しつつあると懸念されており、自然災害へのより良い適応が地域社会に求められている。災害への対策や自然資源の利用など、世代を超えて地域に受け継がれてきた伝統的知識は、日本のいたる所に見られる。自然がもたらす多くの恵みを享受しつつ災いを避けるため、多様な知識や技術が受け継がれてきた。伝統的知識の活用には、多様な知識や技術を持つ地域の人々の連携が鍵となる。

本講演では、福井県三方五湖における治水対策において活用されている伝統的知識を紹介する。この地域では、歴史資料が示すように浸水災害が頻繁におきてきたが、伝統的な土地利用により防災減災が実現している。それと同時に、保全された自然的土地利用は、多様な水生生物の生息場所を提供している。また、そこで育つ魚類は、地域の食文化を支えている。治水対策として整備された人工護岸での自然再生も新たに進められている。防災減災と生物多様性保全を両立する「自然護岸」のデザインやその実践が、伝統的知識を活用しながら進められている。これらの取り組みの鍵となっているのが、三方五湖自然再生協議会の活動であり、地域の多様な関係者の連携が実現している。連携の場としての自然再生協議会は、超学際的なアプローチによる伝統的Eco-DRRの実践を可能にしている。


日本生態学会