| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S03-3  (Presentation in Symposium)

沖縄島北部の異なる林齢の森林における樹洞利用者
Cavity users in forests with different ages on northern part of Okinawa Island

*小林峻(琉球大学理学部), 小高信彦(森林総研九州), 高嶋敦史(琉球大学農学部)
*Shun KOBAYASHI(Univ. Ryukyus Science), Nobuhiko KOTAKA(FFPRI Kyushu), Atsushi TAKASHIMA(Univ. Ryukyus Fac. Agric.)

沖縄島北部(通称:やんばる地域)の森林には、樹洞を利用する動物が生息しており、その中には絶滅危惧種もいる。本地域は過去に伐採歴のある森林が多く、原生的な老齢林は少ない。原生的な老齢林と若齢林における樹洞利用者の違いを明らかにすることは、本地域の保全上重要である。本研究では、やんばる地域における40年生、70年生、及び、少なくとも80年生以上伐採歴のない老齢林において、樹洞利用動物相を比較した。調査は2019年から2020年に、木材腐朽菌による腐朽によって生じた自然樹洞(キツツキ類により掘削された樹洞ではない樹洞)のみを対象として、自動撮影カメラを用いて動物の記録を行った。調査の結果、40年生の森林では樹洞自体が少なく、樹洞利用者は2種しか記録されなかった。70年生では調査地の中で最も多くの鳥類種が記録され、ホントウアカヒゲによる営巣も確認された。老齢林ではホントウアカヒゲの営巣に加え、ケナガネズミやリュウキュウテングコウモリなどの哺乳類による樹洞の利用が観察されたが、樹洞を利用した鳥類の種数は70年生の森林に比べ少なかった。老齢林は高い場所に位置する大型の樹洞を繁殖場所として利用する動物にとって重要な森林であると考えられる。また、皆伐後70年未満の森林は、樹洞を利用する鳥類の生息環境としては回復している可能性があるが、樹洞を利用する哺乳類の生息環境としては十分に回復していない可能性がある。さらに、樹洞は繁殖の場だけでなく、餌場、餌貯蔵場、休息場としての機能もあった。老齢林の樹洞数は40年林に比べて多いことから、老齢林では繁殖の場以外としての役割も大きいと考えられる。


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