| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S03-4 (Presentation in Symposium)
ヤンバルホオヒゲコウモリ(Myotis yanbarensis)は中琉球の固有種であり、IUCNと環境省のレッドリストでは、絶滅するリスクが高い「絶滅寸前」にランクされている。これらの評価では、本種は樹洞をねぐらとして利用すると推測されるため、老齢林に依存していると考えられる。なお、本種が生息する3島では分布が限られていると考えられている。しかし、データ不足の状況であり、本種が希少である原因は不明である。沖縄島での調査から得られた3つの証拠に基づき、ヤンバルホオヒゲコウモリの生息には老齢林だけでなく、そこにある河川環境が重要であると提案する。第一に、ヤンバルホオヒゲコウモリは、すべて河川かその付近で捕獲された。第二に、ラジオテレメトリーによって発見されたねぐらは、すべて河川や谷部のすぐそばであった。最後に、自動録音装置を用いた分布調査により、老齢林までの距離や河川までの距離が増加するにつれて、ヤンバルホオヒゲコウモリの占有率が減少することが示されている。データはまだ少ないが、これらの結果は、予防原則を適用し、ヤンバルホオヒゲコウモリの個体群の存続のためには、重要な生息地だと考えられる河川沿いの老齢林を保護すべきであるという提言を支持するものである。