| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S07-4  (Presentation in Symposium)

正の連合効果をもたらす植物のゲノム基盤とその拡張可能性
Genomic basis for positive associational effects of plants and its extensibility

*佐藤安弘(チューリッヒ大学)
*Yasuhiro SATO(Univ. Zurich)

植物の個体が受ける虫害は自身の形質だけでなく、周囲の他の植物にも依存することがある。このような現象は連合効果と呼ばれ、植物種間だけでなく植物種内の異なる遺伝子型間でも生じることが報告されている。もし異なる遺伝子型間で正の連合効果が生じれば、正の多様性効果をもたらす可能性も考えられる。しかし、数多くの遺伝子型の組み合わせから正の連合効果をもたらすペアを特定することは容易でない。そこで、演者らは各遺伝子座上の対立遺伝子の空間的ばらつきに着目することで、近傍個体間の相互作用を考慮したゲノムワイド関連解析(GWAS)を提案した。仮に”Neighbor GWAS”と名付けた新手法を、野外栽培したシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)野生系統に適用したところ、従来のGWASよりも良く虫害や植食者の種数を説明できた。さらに、遺伝子型間相互作用の結果として生じる形質値をNeighbor GWASの回帰モデルから推定することで、正の連合効果をもたらすペアを予測した。実際に、いくつかの遺伝子型ペアを野外圃場に移植したところ、ペアで混植した場合の方が単植の場合よりもPhyllotreta属ノミハムシから受ける食害が少なかった。本発表の最後には、Neighbor GWASの背後にある回帰モデルに立ち返ることで、頻度依存選択や多様性効果との関連性について考察する。一連の方法論と実例を交えることで、正の相互作用の多様性と普遍性について議論したい。


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