| 要旨トップ | ESJ69 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S07  3月17日 13:00-16:00 Room C, 現地開催/ライブ配信あり

植物ー植物相互作用の多様性と普遍性:植物群集の統合的理解に向けて
Diversity and universality in plant-plant interactions: toward a unified understanding of a dynamic plant community

内海俊介(北海道大学), 山尾僚(弘前大学)
Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.), Akira YAMAWO(Hirosaki Univ.)

古典的に、植物群集の構造や動態を決定づける生物間相互作用として、植物間の資源をめぐる競争がもっぱら重要視されてきた。生物的要因の中では、今もそれが第一の主因子とされていることがほとんどである。しかし、この十数年の間に、植物-植物相互作用についての見方は大きく変わってきた。近隣個体間での認知システムと複雑な応答や、個体レベル・群集レベルでの正の相互作用(facilitation)など、単純な資源競争とは異なる現象が数多く報告されるようになってきている。また、多様性-生態系機能に関する操作実験においても、生産性などに対する正の(見かけ上ではない)多様性効果が一般的に検出される。
その一方で、植物群集に対する植物間の(資源競争以外の)相互作用の役割とその普遍性については、認知や理解は進んでいない。たとえば、極地などの厳しい環境条件下で正の相互作用は重要であると考えられているが、一般的条件下における正の相互作用はほとんど見過ごされている。あるいは、多様性効果をもたらす生物学的メカニズムについて、解明されているとは言い難い。しかし、これらの植物-植物相互作用は、確たる遺伝基盤・分子基盤をもち、進化過程を経て備わる形質に基づいており、植物群集で普遍的にはたらいているはずである。
そこで、本シンポジウムでは、植物間相互作用についての新たな知見について理解を深め、その普遍性と群集への波及効果・意義について議論していきたい。そのために、ゲノムレベルから集団・生態系レベルの現象まで階層を縦断して話題提供をし、植物間相互作用研究の今後の方向性を探る。また、コメンテーターとして、小林真氏(北海道大学)に登壇していただく予定である。

[S07-1]
植物間相互作用における他個体認識の役割 *山尾僚(弘前大学)
Roles of neighbor recognition in plant-plant interactions *Akira YAMAWO(Hirosaki Univ.)

[S07-2]
植物の種内・種間相互作用が引き起こす葉形質の変化とその波及効果 *大崎晴菜(岩手連大)
Ecological consequences of plant trait changes triggered by intra- and inter-specific interactions between plants *Haruna OHSAKI(Iwate Univ.)

[S07-3]
生態系機能に対する種多様性と種内多様性の統合効果 *内海俊介(北海道大学)
Effects of intraspecific genetic variation on BEF relationships *Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

[S07-4]
正の連合効果をもたらす植物のゲノム基盤とその拡張可能性 *佐藤安弘(チューリッヒ大学)
Genomic basis for positive associational effects of plants and its extensibility *Yasuhiro SATO(Univ. Zurich)

[S07-5]
細胞の中の種間相互作用の帰結としてみる異質倍数体種の成立 *吉田健太郎(京都大学)
Establishment of allopolyploid species as a consequence of interspecies interactions in a cell. *Kentaro YOSHIDA(Kyoto Univ.)


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