| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S09-3  (Presentation in Symposium)

農地と自然生態系で使える植物フェノタイピング技術
Plant phenotyping technologies for agricultural and natural ecosystems: current and future perspective

*郭威(東京大学)
*Wei GUO(The University of Tokyo)

作物の高速・高精度表現型解析(以下フェノタイピング)で育種を加速することや,作物生育状況の的確な把握で栽培を効率化することは,SDGsを支える食料の増産・安定生産や,農業分野における「society5.0」実現の基盤となる.近年の次世代シーケンサーの発達でゲノム解析が飛躍的に高速化する一方,対となるフェノタイピングは,多くの場合破壊的で人力に依存し極めて低速で,研究開発や栽培支援のボトルネックとなっている.そのため,高速・高精度かつ安定的に野外でのフェノタイピングを行うための研究開発が,最新の情報科学を駆使しながら世界中で盛り上がっている.その中でも,画像センシングと機械学習を活用した高速フェノタイピングへの期待は高い.しかし,圃場におけるセンサネットワーク,ロボット,ドローン等を用いた時空間データの収集技術が急速に発展しているが,その一方で,得られた膨大なデータを解析する技術が追い付いていない.例えば, 一枚の画像に作物個体が多数あり,同じ遺伝情報を持っていても環境や栽培条件で表現型は極めて多様に変動すること,時系列にそった生育変化が大きいなど,一般の情報科学分野で開発されている解析手法の適応は困難である.そのため,農学分野のドメイン知識をも融合した新たな解析手法を開発する必要がある.
我々は,圃場において作物の形状,植被率等形質の数値データを数十メートル以下の高度で撮影した画像データから安定的に得る手法の開発に取り組んできた.植生調査地, 農家圃場及び育種等試験圃場において栽培されている種々の作物を対象として,画像データによって植物フェノタイピングを行うためのアルゴリズム及び大量の画像データから農業・農学的に有用な植物形質に関するビッグデータを自動的・効率的に構築するパイプラインを確立した.


日本生態学会