| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S13-6 (Presentation in Symposium)
生物圏機能のメカニズムとその地球環境変動への応答を理解する「デジタルバイオスフィア」の構築のためには、生物圏のCO2交換やバイオマス生産の推定のための生態系の機能、構造、多様性の地理空間情報が不可欠である。アジア圏では人口の40%が沿岸から100km以内に密集し、陸上生態系と沿岸海域及び人間活動の拠点である都市が密接にリンクして人間―生物圏システムを形成している。これらの生態系は、たとえば都市郊外の森林は水源林や気候緩和、レクリエーションの場として、また沿岸域では養殖やマリンレジャーといった生態系サービスを提供している。その一方で、土地利用の変化等の人間活動(経済活動)に伴う森林劣化や、生物多様性の減少などの生態系劣化は、近年の大きな関心事となっている。森林は光合成を担う葉群が空間上に配置され、光を効率的に利用できるよう資源分配されていると考えられる。しかし、その構造の全体像を捉えることは難しく、個々の葉が景観レベルでどのように機能しているかを、現場調査だけで把握することは難しい。また、沿岸生態系は、赤潮・アオコといった有害有毒藻類ブルーム(Harmful Algal Blooms, HABs)が頻発するが、陸と接する沿岸域の詳細なマッピングに耐えうる高い空間解像度の衛星リモートセンシングデータが得られてこなかったことが、広域モニタリング手法の開発の阻害要因である。
本研究では航空機・衛星リモートセンシング観測により森林生態系の光合成機能や沿岸生態系の植物プランクトン群衆を広域スケールで推定することで、デジタルバイオスフィアモデルに利用可能な地理空間情報として取りまとめることを目標としており、本シンポジウムでは、研究の本格的な展開に向けたこれまでの背景と今後の展開について説明する。