| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S16-2 (Presentation in Symposium)
日本沿岸の生態系サービスの総合的な評価を実施するため、漁獲量、炭素吸収量、レジャーなどの各サービスの分布を収集し地図上で分布とシナジーやトレードオフを評価した。また、陸域・海域ともに、人口集中vs分散、自然資本利用vs人工資本利用の2軸から、4タイプの将来シナリオを作成した。陸域のシナリオからは人口と土地利用変化に基づいて、河口域の水質を機械学習によって予測した。海域については、人口について、漁港の持続性が関連する一方で、産業に合わせた人口集積の可能性、経済については魚介類の自給率目標、養殖生産の拡大の有無、遠洋漁業の拡大の有無を軸と対応させた。また、社会・政治については資源管理の重視と人工的な護岸や港湾整備、エネルギーについて、自然エネルギーの拡大を対応させた。社会関係については、地縁型社会として漁協を代表させ、漁協のままの形態で自然型(エコツーリズム)または人工(技術革新)型が進むのか、新規参入により同様のことが進むのかの軸を検討した。
シナリオの一部に基づき生態系サービス変化の全国評価を行なった結果、例えば、人工資本利用型の人口分散型社会で現在の藻場が残る一方で、自然資本活用型の人口集中型社会だと、おそらく地方の人口減少による栄養塩減少によって、特に北海道でアマモ場が減少する推定が得られた(Kumagai et al 2021)。予測レンジの縁であり推定誤差は大きいが、自然利用のあり方によっては期待される保全効果が生じない可能性も考慮する必要がある。さらにGIS上の細かい解像度では、地方ごとに様々なパターンがみられ、こうした地域性が重要であると考えられた。例えば、自然資本によるStockの評価と社会のDemandとの不一致が見られており、さらに金銭的な比較を合わせると気候変動による変化以上あるいはそれ以下に影響が大きい場所がある可能性がある。