| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S16-5 (Presentation in Symposium)
これまで著者らは、石西礁湖を事例として、社会-生態系アプローチにもとづく学際研究をおこなってきた。そこではまず、生物学・生態学・社会学・政策学・心理学などを用いた学際研究により、石西礁湖における生態系構造と機能の概要と、その利用形態および利害関係者の関係を整理した。また、そこに関連法制度を重ね合わせることにより、各省庁の役割分担を整理した。さらに、3つの将来シナリオに基づき、石西礁湖の生態系保全にむけた3種類の施策ポートフォリオを立案した。これらの分析の結果、農水省・環境省・国交省・文科省・内閣府など、府省を超えた海洋関連施策の連携・シナジー創出の重要性が明らかとなった。よって本研究では、各省庁の海洋関連法規の上位法として、10の基本法および基本計画に着目し、テキスト分析手法を用いて施策に関するテキストの類似度を評価することにより、政策文書の文言を根拠とした府省間施策連携・シナジー創出の方向性を検討した。その結果、日本の海洋関連施策は、「海洋資源の探査・評価・開発」、「宇宙・海洋および国際連携と安全保障」、「観光と地域活性化」、そしてそれらのベースとなる「科学技術と総合的管理によるレジリアンス強化」という4つの大きな政策群に分類できることが示唆された。今後はこの政策群ごとに、具体的な施策の内容、予算、組織、執行・評価体制などを検討するとともに、担当行政官へのヒアリング調査等も行い、沿岸域の生態系保全にむけた省庁間連携とシナジー創出の方向性をさらに詳しく検討する予定である。