| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S18-4  (Presentation in Symposium)

奄美・琉球の外来脊椎動物が水生昆虫に与える影響とその対策
Negative impacts of alien vertebrates on aquatic insects on Amami and Ryukyu Islands and their countermeasures

*富永篤(琉球大学教育学部)
*Atsushi TOMINAGA(University of the Ryukyus)

琉球列島でみられるような島嶼生態系では,在来生物の生息地や個体数がもともと限られており,さらに在来種が独自の進化を遂げていることがあるために,外来種を含め,人間活動の影響が在来種の絶滅につながる危険性が高いことが指摘されている。奄美・琉球の水生昆虫に対する外来種の影響としては,外来種による捕食,外来の水生植物による水辺環境の劣化が挙げられるが,演者らはこのうち,特に外来種による在来種の捕食が,どの程度,在来水生昆虫に悪影響を及ぼしているのかを調査してきた。本発表ではまず,特に水生昆虫に影響のありそうな水辺の外来両生類のシロアゴガエル Polypedates leucomystax,オオヒキガエル Rhinella marina,そしてウシガエルLithobates catesbeianusの食性調査の結果を紹介する。食性調査の結果,3種は様々な在来種を捕食していることが明らかになった。特にウシガエルは,成体も幼体も様々な水生昆虫を捕食しており,さらに調査地では在来の両生類も多く捕食されており,上記3種の中では水生昆虫を含む在来種に対する影響が特に大きいことがわかった。次にウシガエルの駆除手法を検討し,おもにかご罠と見つけ捕りによるウシガエルの駆除を試みた結果を報告する。2020年6月から駆除を続けた結果,調査池のウシガエルの成体の個体数が0か1の状況を継続できており,2021年のウシガエルの繁殖を完全に抑え込むことに成功した。ウシガエルの駆除により,池の動物相にも変化が見られ,水生昆虫についても増加の傾向がみられている。これらの駆除前と駆除後の調査池の生物相の変化,また他の外来種の駆除実験の経過についても紹介したい。


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