| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S18-5  (Presentation in Symposium)

奄美・琉球諸島における地域に密着した生息域内保全・生息地再生技術の開発
Development of technologies on biotope conservation and restoration closely related to the regional characteristics of Ryukyu-Amami Islands, Japan

*冨坂峰人(日本工営株式会社)
*Mineto TOMISAKA,(Nippon Koei Co., Ltd.)

現在の奄美琉球地域の農地の大半はサトウキビ畑となっているが、昔は多くの水田があり、水生昆虫類は稲作と共生する形で生息していたと考えられる。しかし、昭和30年代後半の大干ばつとキューバ危機をきっかけに稲作からサトウキビ作への転換が進み、現在この地域の水田はわずかになってしまった。更に、近年は農家の高齢化や離農等により残された水田も放置され草地へと変化してきている。
この地域で起きている水生昆虫類の急減には、生息域であるこのような農地周辺の水辺の減少が影響していると推察される。しかし、水生昆虫類と共生する昔のような粗放的な稲作が、今後十分な面積で復活することは期待できない。また、森林域と異なり、農地周辺では人の立ち入り規制や保護地域の指定などの対策は困難だと考えられる。
そこで、現在の畑中心の農地内における水生昆虫類の生息地候補として、赤土対策沈砂池に注目した。沈砂池は奄美琉球地域特有の環境問題である赤土流出の対策施設として農業農村整備事業により設置されている水が集まる施設であり、溜まった赤土の定期的な浚渫が必要なため水辺の創出・維持に適している。しかし、堆積した赤土が高含水比で有機物を含むため浚渫や処分が難しく、現在放置され陸地化しているものも多いことから、対応策となる技術を開発してビオトープ化を試行した。加えて、休耕に伴う給水停止が水田が草地化する主要因であることから、休耕田内を除草し給水することでビオトープ化できるか試行した。
本シンポジウムでは、開発した技術手法と、それにより試行した沈砂池ビオトープ、休耕田ビオトープの成果を紹介するとともに、これらが既に奄美琉球地域で実施されている赤土対策や農地の多面的機能に関する施策との親和性が高く、連携することで農地に期待される公益機能の向上に寄与すること等を紹介する。


日本生態学会