| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S19-5  (Presentation in Symposium)

東京大都市圏における植物群集集合は歴史によって駆動される
Plant community assembly in Tokyo metropolitan area is driven by history

*岩知道優樹(横国大), 内田圭(東大), 佐々木雄大(横国大)
*Yuki IWACHIDO(Yokohama National Univ.), Kei UCHIDA(Univ. Tokyo), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

地球上においてかつてない勢いで拡大する都市は、生物多様性を脅かす最大の原因の一つとされている。しかし都市生態系には、特有の生物多様性を有するだけでなく、人々に多様な恩恵を与えており、都市における生物多様性の保全は、生物だけでなく人間の生活を支えるという意味からも重要である。

これまで都市生態系保全の研究は、都市化による生物多様性の減少を抑制することを目標に、コリドーやstepping stoneなどを効果的に作ることで、緑地間の連続性を増加させることに焦点が当てられてきた。緑地間の連続性の増加は、生物の移動や分散を促進させる可能性がある一方、多くの外来種が生息する地域においては、外来種の分布を拡大させる恐れがあるため、未だに生物多様性保全の効果については議論が行われている。また、都市化は生息地周辺の環境を変化させるだけでなく、生息地内部の環境をも変化させるため、都市部には様々な環境を有する緑地が存在している。このように都市緑地に環境の異質性が存在することで、都市の生物多様性が維持されている報告もあるため、都市生態系を保全するには生息地環境も考慮する必要がある。都市の生物多様性保全にかける労力やコストには制限があるため、効果的な保全策を明らかにする必要があるが、周辺緑地や生息地の環境(歴史性や管理強度など)のどちらが生物多様性保全に効果があるのかについてはほとんど明らかにされていない。

本研究では、都市化に伴う様々な環境変化が都市の植物群集に与える影響を明らかにするために、世界最大の都市人口を誇る東京大都市圏を対象に、都市―農村勾配に沿って植物の調査を34か所で実施した。同時に、植物の分布や繁殖に影響を与える環境要因や都市化にかかわる景観要因を計測した。これらから、植物群集がどの要因から最も影響を受けるのかを明らかにした上で、その要因が生物多様性保全に及ぼす影響について議論を行う。


日本生態学会