| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S19-6 (Presentation in Symposium)
一般的には、圃場整備は水田畦畔上の草地(里草地)の植物多様性を長期に渡って低く抑えるレガシー効果がみられるが、このレガシー効果の程度は研究ごとに異なり、圃場整備地において非整備地と同等の植物多様性を観察できたという報告もある。しかし、研究地域ごとに圃場整備の影響が異なる理由は解明されていない。本研究では、圃場整備前の水田の立地環境の違いにより、圃場整備のレガシー効果の現れ方が異なるという仮説を立て、そのを検証を行った。
研究では、兵庫県神戸市、宝塚市、三田市の低地から中山間地の非整備地26地点と整備地24地点の里草地を対象として、全50地点で1×1m(1m²)の方形区を2つずつ設置し、各プロットで2019年6月、10月の計2回植生調査を行い、全維管束植物を記録した。加えて、調査水田の傾斜、周辺景観 (人工地、非整備地、整備地、二次林の割合)、畦畔角度、土壌硬度、土壌水分含有量、土壌pH、開空度および植生高を測定した。
解析の結果、中山間地の傾斜が大きな水田(棚田)ほど非整備地と整備地間の全植物種数および在来多年生草本種数の差が大きく、平野部に位置する平田より中山間地に位置する棚田の方が圃場整備から負の影響を受けやすいことがわかった。この時、土壌水分含有量が多い調査地では圃場整備によるレガシー効果が小さくなることが示唆された。
本結果をもとに、圃場整備のレガシー効果の現れ方の水田立地依存性について議論する