| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S22-2  (Presentation in Symposium)

長期観測の必要性:生物多様性の評価・予測の視点から
Necessity of long-term observation: from the perspective of biodiversity assessment and projection 

*角谷拓(国立環境研究所)
*Taku KADOYA(NIES)

生物多様性の長期観測への社会ニーズはかつてなく高まっている。現在決議にむけて議論が進んでいる生物多様性条約のポスト2020生物多様性フレームワークでは、生物多様性への脅威の削減に関する目標が立てられ、生物個体数や生態系の健全性の変化を指標として評価することが提案されている。また、30by30として国内でも注目を集めている保全地域設定に関する目標では、土地利用や管理の保全効果を継続的に観測して評価することが求められている。さらには、経済・産業界においても企業活動が自然資本に与える影響を評価し開示する「自然関連財務情報開示」の議論が進んでおり、この枠組みが本格的に導入されれば、個々の企業が生物多様性に与える影響によって評価されることになる。そうなったとき、生物多様性の長期観測とそれを支える観測網は社会の運営に必要不可欠な基盤インフラとしての役割を果たすことになる。一方で、社会ニーズと長期観測、また、生物多様性情報の統合や解析を通じて両者をつなぐ評価・予測の3者の間には依然大きなギャップがある。本講演では、このギャップを埋めることを主要なミッションの一つとして、国立環境研究所が2021年に立ち上げた生物多様性連携研究拠点について紹介する。その上で、今後の長期観測の持続的な発展にどのような取り組みが必要となるかについて議論したい。


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