| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S22-9 (Presentation in Symposium)
長期的な生態系観測は、生態系や生物多様性の変動を捉えるための重要な礎となるだけでなく、研究成果を実際の管理に活かす取り組みの一環としても重要である。生態系復元などの現地の取り組みを評価するためには、地域の自然・社会課題を取り巻くステークホルダーとの協働が鍵となる。本発表では、発表者らが現地の管理者・政策決定者と協働してきた北海道知床国立公園内の自然林再生活動を紹介する。ここでは、科学的知見をもとに合意形成し、管理手法を実践しながら改善するアプローチが取り入れられており、適応的管理に基づいた生態系復元のモデルケースであると言える。発表者らは、過去に取得された航空機LiDARデータと管理者により記録・蓄積された現地データをもとに、新たにドローン空撮を実施し、森林の垂直構造の変化を定量化することで、当地の森林再生の成果の定量化に繋げてきた。このように、過去の広域なリモートセンシングデータや地域に根差したモニタリングデータの活用は、生態系観測のデータ拡充をより効果的にするだろう。しかしながら、持続的な生態系観測の実現に向けては、地域内の協働だけでなく、地域および世代をまたいだネットワーク展開も求められる。地域協働を起点とした他地域へのネットワーク拡張の可能性、既存のコミュニティへの若手世代の参入を通じたネットワークの維持・拡張についての展望を議論したい。