| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S24-3  (Presentation in Symposium)

開花と昆虫の訪問に関連したゴーヤの花の真菌群集の変化
Changes in the fungal community assemblages on bitter gourd flowers associated with anthesis and insect visits

*中村祥子(森林総研), 池本美都(筑波大), 平岩将良(農研機構), 滝久智(森林総研), 潮雅之(京都大)
*Shoko NAKAMURA(FFPRI), Mito IKEMOTO(Tsukuba Univ.), Masayoshi HIRAIWA(NARO), Hisatomo TAKI(FFPRI), Masayuki USHIO(Kyoto Univ.)

動物媒花の微生物群集は、風や降雨等の物理環境による非生物的移入、動物の訪問による生物的移入の両方を受けると考えられる。様々な要因が絡んで変化する花の微生物群集は、それ自体が群集やメタ個体群の基礎生態学的材料として興味深いが、送粉研究の視点からは、訪花動物がもたらす花の微生物群集の変化の特徴解明により、訪花動物の種類推定が可能であるか、が興味深い。訪花動物の訪花モニタリングにおいては、野外調査の省力化や、より広範囲のモニタリングに課題があるため、花の微生物群集利用に期待がかかる。そこで、訪花動物による花の微生物群集の変化を、開花に伴う非生物要因による変化と切り分けて明らかにすることを目的に、訪花をコントロールして花の真菌群集の組成変化を検証する野外実験を行った。虫媒雌雄異花の一日花をつけるゴーヤの雄花を用い、開花前のつぼみ、ネットで訪花を遮断した網掛け開花、訪花を許す網無し開花の3処理11花ずつについて、各花の花弁、葯それぞれの真菌群集のアンプリコンシーケンス解析を行うとともに、ビデオ撮影により網無し開花処理の花の訪花動物をすべて記録した。PERMANOVAとPERMDISPの結果、葯、花弁ともに、つぼみにくらべ開花した花の真菌群集は多様で、α、β多様性がともに増大したが、昆虫の訪花による明確な真菌群集組成の変化は葯のみで見られた。網無し開花の花の真菌群集組成と動物の訪花数の関係からは、トラマルハナバチ、ハラナガツチバチ、コハナバチ、セセリチョウが真菌群集組成の変化をもたらす可能性が示唆され、さらに訪花動物の種類によって異なる方向へ組成が変化する傾向があった。影響する訪花動物の種類は花の部位(葯/花弁)によって異なり、これが部位間にみられた昆虫の訪花による効果の違いに影響したものと考えられた。本発表では、それぞれの訪花動物の特性を考慮して、これらの結果の説明を試みる。


日本生態学会